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フェイス・略・ツアー!(夢)

 

「お前はそれでいいの?」「もう俺、慰めてやんないよ?」って、言ってくれるはずだったのに。ダルそうに、でもしょうがないなあなんて言いながらいつもみたいに世話を焼いてくれるはずだったのに。

 

ライブレポという名の夢小説プロット紹介ブログ、第2弾。前回唯一"現実"だったライブまでもが"夢"となりました。

 

 

当たり前に一緒に行くと思ってた来週の花火大会、あの子と行くことになったんだ。

ーあ、唐突に夢小説始めたなと思った?こっちだって、普通にライブの感想挟みたかったよ。ライブレポという体裁を保つこともできない。あのとき確実に目が合ったとか、言わせてよ。向こうにとってはただの1日にすぎないだろうけど、こっちはその1日にかけているんだから。

 

もうそっちは来年卒業するんでしょ?一緒に花火大会行くんじゃなかったの?高校まで一緒になってしまった幼馴染が仲良くなったひとつ上の先輩。いつの間にか一緒に仲良くしてもらって。誘ってもらえた去年の花火大会は台風で中止になった。あからさまに落ち込んでいたら「毎年やってんだから、来年ね」って、笑いながら言う。どこで待ち合わせとか何時から行こうとかは決めてなくても、「晴れるっぽいね」とか、「あんな落ち込んでたから今年は楽しませてやらないとな」とか、この会話って一緒に行くからしたんじゃなかったのかな。

 

「花火大会、オレ一緒に行こっか?」

そうハリーに言われて、気づいた。聞くとルイは気になっていた同じクラスの子と一緒に行くらしい。仲の良い後輩の幼馴染、それ以上でもそれ以下でもなかったらしい。約束なんて、わたしたちはしてなかったらしい。それにしてもあいつに気づかされるなんて結構鬼畜じゃない?気を遣ってよ。今まで気づかなくてもいいことにすぐ気づいて、気遣わなくてもいいのに気遣ってくれてたくせに。

午前で授業が終わった日、3人でファミレスに寄った時。「叶わない恋しちゃってんの?幼馴染に」って、ハリーが席を外した隙に聞かれた。何言ってるの。そんなことない。……ことにしている。認めなければ、ここでうんと言わなければ事実にならない、よね?周りにも自分にも有耶無耶に、誤魔化していたのに。そうすれば何かが起きても、何もなかったことにできる。それなのに知り合って1週間でルイはわたしに失恋させようとしてきた。

うんとは言わなかった、でも否定もできなかったわたしをあれから事あるごとにずっと慰めてくれた。面白がってただけかもしれないけど。別に失恋相談なんてしてないのに。それなのに、一番大事なところで放棄しないでよ。

 

 

ルイって……わかってくれてるはずなのにわかってくれてない。ドキュメンタリーのプレミア来てくれて、コロナでダメになってもツアースタート地にしてくれて。で、なんでキャンセルするんだよ。約束なんてしてなかったかのようにルイが楽しんでるところを見なければならない。5月から北米ツアーが始まって、アジアツアーなんてまるでなかったことになる。まあ、まるでもなにも本当にないんだけどね。

 

 

そしたらもう、先月のハリーの動画を見ることでしか癒せないんだこの傷んだ心は。で、前回のレポに繋がるんだよ。どう転んでも腐れ縁幼馴染ハリー。ドア一枚挟んでキスされたって、やっぱりハリーなんだよ。絶対に逃しちゃいけないときに逃さないのがハリーだから。だから離れられない。なにもかもに絶対にコレというタイミングがあるけど、コレのときにいてくれるかどうか。コレを実現してくれるかどうか。ルイ、あんたのコレは日本で1D時代にやったアカペラがどうとか答えたインタビューなんかじゃなくて、ドキュメンタリーのプレミアでの来日なんかでもなくて、今回のこのツアーだったんだよ。来日公演するってことだったんだよ。

 

結局、ハリーと近所の公園のベンチでアイスを食べながら遠くで上がる花火を見た。行くつもりなかったけど、ハリーが家にアイス持って来るから。溶けちゃうから、ただそれだけ。アイス勿体無いし。「花火見たかったの?」そう聞くと、「ん?あー、ひまだったから」とだけ答える。でもわたしは知ってる、この前花火大会の誘いを断っていたの。先約があるからって言ってたけど、先約がなくなったからわたしと?それとも、わたしが先約?そうやって都合の良いとこだけを思い出し、都合良く解釈しちゃダメなのに。傷つくだけなのに。花火を見るその綺麗な横顔から目が離せなくなる。「綺麗だね」に「ね」としか返せないわたし。こっちを向いてきたハリーは、花火の話に自分のことを返されたとわかっているのかな。

ふとスマホを見るとルイからの通知が来ていた、「楽しんでる?」。なんだか見られちゃいけない気がして急いでスマホを伏せた。「なに?隠し事?笑」全部見透かされている気がした。「違うけど。だいたい、わたしに誰から連絡来ようと気になんないでしょ笑」全然眼中にないくせに。「気になるよ。いっつも、気にしてる」真剣な顔で、真剣なトーンで言わないでよ。何もなかったことに出来なくなるからー。

 

 

 

キャンセル後の返金、手続きしてから即振り込まれた。でもわたしは、それに勝る早さで使い切った。なにもかも、なんにもなかったことになる。